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恋するパン、溶ける心とチョコレート 最終話 ~永遠にふたりぼっち~【短編小説】

DATE
2017.2.2

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【前回までの「恋するパン、溶ける心とチョコレート」は……】

秩父のパン屋で出会った一組の男女、「うみ」と「空」。彼らはお互いに惹かれあい、パン屋を巡る旅をすることに。ローカル線に乗り、秩父から川口へ向かう2人だったが、空がうみの元から突然消えてしまったことがわかり……。

 

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空がいなくなってしまったのは、川口へ向かう途中に立ち寄った池袋の喫茶店でのことだった。私たちはおもむろにコーヒーが飲みたくなって、池袋駅前の「タカセ」に寄ることにした。空は「下のパンコーナーで、パンを買ってくる」と言って、席を立った。そしてそのまま、二度と私の前に現れることはなかった。

 

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その日、私は呆然としながら家に帰った。そして、眠った。あくる日の昼が来ても、夜が来ても、ベッドから出られなかった。

 

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2日が過ぎて、冷蔵庫の中がカラになったので、コンビニに行くことにした。コンビニで水とメロンパンをかごに入れて、店内をフラフラしていたら、ふと週刊誌の表紙が目に飛び込んできた。

「関係者激白!人気読者モデル『Sora』による失踪のすべて」

表紙にはこんな見出しと、うつむいた空の顔写真がうつっていた。

 

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空がモデルだったなんて知らなかったし、失踪しただなんて……。どうして、彼は何も言ってくれなかったのだろう。

 

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私はその週刊誌を購入して、コンビニを後にした。空のことが頭の中をぐるぐるして、無性に走り出したくなったので、全速力で走った。「あの横断歩道を渡ったら、家だ」自分の中にある恐怖心と喪失感を振り払うように、走った。息を切らして横断歩道に辿り着いたら、信号が赤になってしまった。

私は、溢れる涙を止められなかった。

 

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泣きじゃくりながら、ふと横断歩道の先を見た。そうしたら横断歩道の先に……空がいるじゃないか。

 

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空が横断歩道の先に立っている。車道をビュンビュンと走る車。

「そら!」私は叫んだ。

 

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空が微笑みながら、小さく手を振っている。

そして手に持っている板チョコのようなものをかじって呟いた。

「ありえない運命の旅の続き、またはじめたいんだ」

 

おわり

 

 

▼物語の後に、こちらの記事はいかが?

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※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは関係ありません。

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